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株式会社ダイセキ環境ソリューションは、土壌汚染の対策事業を中心に、産業廃棄物の再資源化、バイオディーゼル燃料事業などを手がける環境問題を解決する東証プライム上場企業です。メーキューでは、給食受託企業として、食品廃棄物の削減を中心に持続可能な開発目標(SDGs)に貢献できるよう取り組んでいます。それに伴い2022年7月より自社3拠点のセントラルキッチンより排出される廃食油の回収を同社と契約開始しました。今回は、同社に廃食油の回収をお願いすることで実現する従来の廃棄委託処理からバイオエネルギーに活用する新たな取り組みと環境リサイクルによる循環型社会の展望について株式会社ダイセキ環境ソリューション 常務執行役員 松岡容正さんと環境事業本部 資源循環事業部 部長 水野雅庸さん、課長代理 横尾篤郎さんに弊社専務取締役 山本貴廣(以下:山本)がお話を伺いました。

5つの事業を展開する環境ソリューション事業

山本:ダイセキ環境ソリューション社について教えてください。

松岡:株式会社ダイセキから分社化した会社が株式会社ダイセキ環境ソリューション(以下、ダイセキ)となります。ダイセキでは、土壌汚染の対策事業を中心に、廃石膏ボードリサイクル事業、バイオディーゼル燃料事業などの産業廃棄物の再資源化、PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の適正な保管、処分のコンサルティング事業、土壌改良材事業などを展開する会社となります。

廃食油をバイオディーゼル燃料にして環境リサイクルに取り組む

山本:2012年からバイオディーゼル燃料(以下、BDF)の製造販売を開始されましたね。

松岡:そうです。2012年3月2日にバイオエナジーセンター(愛知県東海市)を開業しました。当時ゼネコンから業界の傾向として、資源の有効活用をしなければならないのだが、CO2削減とかできないか?と相談を受けまして。そこで、BDF事業を立ち上げてみようかという事で始めたのが発端になります。

まずコンソーシアム(共同事業体)という連合体を作って、我々が核となり、流通業や外食産業から廃食油を回収する。そして、我々がBDFを作って、ゼネコンに繋ぐというリサイクルの流れを作りました。

 

山本:現在はどのようなところから廃食油を回収していますか?

松岡:銀行からの紹介や親会社(株式会社ダイセキ)と取引のある企業の社員食堂から出る廃食油を回収しています。最近では、廃食油をBDFに活用して脱炭素ESG経営を推進したいというお客様からもご用命いただくようになっています。

名古屋市と市民とともに確立した先進的な循環リサイクルモデル

(株)ダイセキソリューション様 資料より

山本:自治体との連携はどうでしょうか?

松岡:名古屋市と連携して名古屋市内のスーパーに黄色い箱を置いています。一般家庭で要らなくなった油を持ってきてもらい、我々が回収しています。固めるテンプルのような処理タイプではなく油を持ってきてもらうので手間はかかってしまいますが、回収した廃食油で作ったBDFを市バス、ごみ収集車で2015年4月から2022年3月まで使用していました。残念ながら今年度から車両の更新により車両での使用はなくなってしまいました。しかし、一般家庭で出た廃食油を燃料に変え、市内の車両燃料として活用する。名古屋市の中で循環するモデルを名古屋市と市民の皆様とともに継続できるように来期以降に「B5」の利用による資源循環を再び構築できるよう名古屋市に提案中です。他の自治体からの相談も増えてきておりますし、これからこういった取り組みも増えてきそうです。

 

山本:これから環境リサイクルの取り組みはますます増えそうですね。今までも言われていましたけど、これだけ異常気象になって、本当に一人一人が真剣に考えていかなきゃいけないフェーズになってきたのかなと思います。

松岡:そうですね。まさにおっしゃる通りで。昔は「廃棄物はゴミだ!」と言われていましたが、今では「廃棄物は資源だ!」に変わってきています。

不要なものに環境負荷低減の機能を持たせて新たな価値を生み出す

松岡:2015年に「ビジョン創造プロジェクト」というのを立ち上げて、「10年後の2025年にどんな企業になろうか」と全社員参加型でいろんな意見を聴収して、いろんなビジョンを作っています。そのビジョンの中で、「私たちは日本を代表する環境バリューストラクチャー創造企業を目指します。」と掲げています。社会的に不要になったものに新たな価値を付け、環境負荷を低減する機能を作り出していく。まさしくその一つがBDF事業です。もちろん土に関わる事業もそうですが、社会に貢献できるような事業と一緒に我々も育っていく、成長していく体験をしていきたいと考えています。

廃食油の燃料化から活用までを国内循環できるように

山本:まだまだ廃食油のリサイクルというと飼料にされることが多いかと思いますが、BDFの依頼はどうでしょうか?

水野:最近では、どういう用途に使うかといった意識を持つ事業者様も増えてきています。BDFの活用が食品のリサイクル、廃棄物リサイクルにつながり、CO2削減の動きにもつながる。そういった意味で「廃食油を提供します」と言っていただける事業者様も増えてきております。燃料として利用したいという話もありますので、徐々に比率が飼料から燃料に移行してきているなと感じています。

松岡:廃食油が燃料に変わるという認知はまだまだ低いと感じています。脱炭素社会の実現やSDGsへの貢献と言われる世の中であっても、自分が出している廃棄物が最終的にどうなっているのか、地球環境とはなかなか結びつかないと思います。一方で大手企業などでは、脱炭素に貢献できるとして、燃料化したいという要望が増えてきています。排出側の意識が高まってくると、まだまだ差はありますが飼料と燃料のリサイクルの差は今後縮まっていくと思います。そして、BDFの国内循環を目指しています。海外へ輸出しようとすると、どうしても船舶を使うことになるのでCO2を出してしまいます。日本国内で出てくるものについては国内で循環させて燃料化する方がいいと思っています。

バイオディーゼル燃料活用に向けた課題

山本:我々も学校給食センターを受託していますが、センターから学校に配送する配送車を「EVトラックにしてほしい」という要望も出てきております。しかし、まだまだEVトラックはコストが割高で普通の車の倍ぐらい掛かります。環境的には良くても現実的には難しい状況ではあります。そこでバイオディーゼル燃料の配送車みたいなのがあったらいいのにと思うこともあります。

 

松岡:ゆくゆくは電動車が開発されるとは思いますが、私たちにできることと言えば、今の内燃機関、つまりエンジンを使って何かできないかというところだと思います。我々のバイオ技術を使ってもらいたい反面、メーカー側の保証という問題が出てきます。現状では「B5」と言いますが、軽油にバイオディーゼルを5%以下の割合で混ぜたものがあります。「B5」であれば軽油として扱っても何ら問題はないということでメーカーの保証が受けられます。しかし、「B100」とか「B20」とかになると、保証対象外になってしまいます。そうするとトラブル時にメーカー保証が受けられないというのが「B5」以上の利用促進の阻害要因になっています。そこには法の問題や品質の問題があります。同じように運送会社から使いたいという要望もありますが、現実的には「B5」が合理的という判断です。

他にも「B5」のタンク補給はどうするかといった問題もあります。インフラ面を含めて流通網、供給網が課題です。また「B5」は特定加工という許可が必要となり、愛知県では唯一豊川市に提携している所がありますが、そこで作って、行政のチェックを受けて、品質OKなものを提供するという流れになります。

 

松岡:飼料もトレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡すること)が厳しくなってきており、どういったものを使っているか見られるようになってきました。廃食油はトレーサビリティを担保できない事もあり、年々飼料に混ぜにくくなってきています。そういった意味でも飼料化から燃料化へシフトしてきている背景があります。

水野:利用にあたっては注意が必要で、BDFを100%使うとリスクも大きいので、まずは簡単に切り替えられて、メーカー保証も受けられる「B5」を使っていただければと思います。

主体性を持たせる社内教育と積極的な情報収集

山本:ESGの資料を作るのは大変ではないですか?

松岡:実は新入社員も編集に参加しています。それぞれが担当のテーマについて自分で考えてアプローチして執筆します。この活動を通して新入社員がより会社を知ることができる事ができています。

 

山本:社内でどういう活動をやられていますか?御社ならではの研修とかありますか?

松岡:月に一度会議を行いますが、そこにコンプライアンス勉強会というコマを用意して、本社からテーマを発信して15分から20分、全員で勉強するという事を毎回必ずやっています。また環境法令などは結構頻繁に変わるので見落としたりしないように社外講習会も受けるようにしています。事業推進部という部署が許認可含めて動いていますが、配属される新入社員含め管理職は積極的に社外講習を受けることにしています。

環境マネジメントシステムISO14001を取得

山本:2021年のBDF生産量が334tですが、直近はいかがですか?

松岡:直近のBDF生産量は昨年度の334tから508tに増加しています。企業様の用途やニーズが高まってきているということが言えます。今後もBDFの生産については上がっていくと予想しています。創業当初はBDF燃料をいろんな重機に使用していただきました。当初は結構トラブルもあって、特に寒冷地では、重機に使ったりすると油自体が固まってしまい、噴射不良を起こすということもありました。しかし、今はお客様の方が「そういった事が起こるよね」と理解していただき、お客様側でメンテナンスするので使いたいという話もあります。

 

山本:「バイオ燃料を使う事に意義がある」という考え方になってきたということですね?

松岡:そうですね。世の中に受け入れられやすくなってきたと感じています。

 

山本:ISOの活動もやられていますよね?

松岡:環境の「ISO14001」を取っているのは廃棄物関係の会社では珍しいと思います。「ISO9000」番は結構あると思いますが、「ISO14001」を取ったところは珍しくて、結構必死になって維持しています。(笑)

 

山本:工場では水を使っていないとお聞きしました。汚水や汚泥の発生は少ないですか?

松岡:排水処理が不要な非水型を採用しており、水を使っていないので水処理施設や排出処理の産廃費を抑えることに加え、環境にも配慮しています。

 

松岡:給食でいえば、食品残渣も大きな問題ではないですか?

山本:残菜や食べ残しを社内の微生物処理機を使って、1日200kgを最終的に水にする取り組みをしています。学校で出る牛乳の廃棄も大量なので最近は許可制になり、専門の回収業者にお願いして環境に配慮しています。また今年の夏は「学童クラブ」で給食を提供することになりました。夏休み限定ですが、いままでお弁当を持ってきていた児童に我々が給食を提供することで、共働き世代の負担軽減や児童利用者の増加に配慮した試みとして受託しています。セントラルキッチンがある給食会社はそんなに多くないので、お役に立てればという事で提供しています。

 

松岡:夏休みは給食がないのでそういった取り組みがあると良いですよね。

山本:夏休みは基本的に給食がないので学童クラブに行けば食べられる。親御さんも喜ぶという社会的に意義がある取り組みかなと思っています。

今後の展望

山本:バイオディーゼル事業の目標はありますか?

松岡:現在、BDF製造施設の稼働はまだ100%になっておりません。月120kℓの廃食油回収でフル稼働になる計算ですが、そのためには現状ベースと比較すると廃食油を今の倍ぐらい回収しなければなりません。目標としては、施設の能力をフル活用する廃食油回収量を倍、生産も倍にすることを目標としています。

弊社事業の8割は土壌事業です。残り2割がBDFを含めた非土壌の事業となります。この非土壌の事業割合を上げていきたいと考えています。その主役がこのBDF事業になります。

まだこれからの部分もありますが、人も手もかけながら引き続き取り組んでいきたいと考えています。

未来への挑戦

山本:今後力を入れていく事業や取り組みなどありますか?

松岡:廃石膏ボードリサイクル事業も展開していまして、もともと石膏ボードは埋めた時に硫化水素が発生してしまう問題がありました。これもコンソーシアム(共同事業体)方式で、石膏ボードを回収、我々が破砕、石膏ボードメーカーに戻す仕組みでリサイクルしています。排出する側と使用する側を我々がつなぐ。こういった取り組みも評価をいただいています。垂直統合型ですべて自分のところでやるのではなく、いろんな企業とタイアップさせてもらいながら賛同していただける仕組みをこれから作っていこうと考え始めています。

山本:最後に廃食油回収を倍にするための取り組みなどはありますか?

松岡:現在、我々社員は家庭の使わない油を会社に持ってきています。月何本と回収本数を記録しています。またこれから始める予定ですが、社員が飲食に利用している飲食店などに声を掛けさせてもらって、その店舗から回収するみたいな取り組みも考えています。

 

山本:その取り組みは良いですね。

松岡:お邪魔した時に一緒に回収させていただくとかですね。そういった動きがBDFや燃料化の動きにつながると思っています。社会全体が「廃食油を燃料化しようよ。地球環境に貢献しようよ。」となるきっかけにもなりますので、我々も草の根になりますけど地道なところから始めていこうとしています。

 

山本:今日はお忙しいところ貴重なお時間をどうもありがとうございました。

写真左より(株)ダイセキ環境ソリューション水野氏、横尾氏、松岡氏、メーキュー(株)山本、三輪、金森