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愛知県立三谷水産高校水産食品科の生徒さんがSDGs(持続可能な開発目標)の学習の一環として深海エビの一種である「ジンケンエビ」を利用した商品を、ヤマサちくわ株式会社様(以下:ヤマサちくわ)と協力して開発した。今回生徒さんが考案した商品「丸っとエビ太郎」を学校給食で提供した愛知県蒲郡市にある蒲郡市学校給食センターの竹下所長(以下:竹下所長)にお話を伺いしました。

【蒲郡市学校給食センター】                      高校生が考案した深海エビ商品を給食メニューで提供

地元水産高校の皆さんが考案した「丸っとエビ太郎」

食品ロス削減や地産地消をテーマにしたSDGs給食

―地元水産高校の生徒さんが考案した商品を学校給食に採用したとお伺いしました。まず「ジンケンエビ」とはどんなエビですか?

竹下所長:はい。ジンケンエビは深海に住むエビの一種です。ジンケンエビは身体が脆弱で水分が多いため劣化が早く、水揚げされても市場に出回らず廃棄されることが多いエビです。
以前、給食でから揚げにして提供したことがありますが、身が小さく、頭の部分が硬く、食べにくかったですね。ほんのり甘くて美味しいですが扱いが難しいです。
それを三谷水産高校水産食品科の生徒さんたちがSDGsの学習の一環として商品化できないかと考案し、ヤマサちくわさんの協力を得て、商品化の目途がついた段階で蒲郡市に相談がありました。その後、試食した結果、学校給食で使ってみてはどうかという話になりました。

専用容器に入った「丸っとエビ太郎」

学校給食ならではの工夫とは?

―給食で採用するにあたってのご苦労やエピソードはありましたか?

竹下所長:そうですね、最初に試食した時にエビの香りがとても良かったのですが、エビが苦手な子にはちょっと香りが強いかなと思いました。
それと学校給食の場合は調理場で加熱調理して、専用容器に入れて各学校に配布し、食べるまで容器に入れた状態になります。すると、調理したエビの香りが容器の中に充満してしまいます。その状態でふたを開けると香りが強くなりすぎてしまい、おいしく感じられなくなる可能性もあるということがわかりました。そのため、エビの配合量を調整する必要がありました。

 

―試作段階で試食だけでなく、子供たちに提供する時間まで想定されていたのですね。

 竹下所長:そうです。ある程度時間をおいて、実際にどうなるのかを試してみました。商品自体の味は良かったので、あとは配合量を変えながらエビの香りが強すぎず、弱すぎずの着地点を探すのが工夫したところです。
給食のメニューに組み込む時はご飯に合わせることは決めていたのですが、他のメニューの作業工程を考慮しながら「丸っとエビ太郎」に合う付け合わせを決めました。

取材時の小学校給食「丸っとエビ太郎、ワンタンスープ、シャキシャキおいもサラダ」

「丸っとエビ太郎」に込められた子供たちへの想い

試食を終えた蒲郡市教育委員会 教育長の壁谷様(以下:壁谷教育長)にもお話を伺いました。

―「丸っとエビ太郎」を食べた感想はいかがでしたか。

壁谷教育長:本当においしかったです。エビを丸ごと使っているから香りが良くて食べやすかった。エビの食感が苦手な子どもたちも食べられる。そんな揚げ半だったと思います。

―地元水産高校の生徒さんが考案した商品を学校給食に取り入れたとお伺いしました。

壁谷教育長:これはもともと三谷水産高校の授業の一環でSDGsの学習をやっていて、SDGsの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」から、美味しいのに捨てられてしまう「ジンケンエビ」を何とか利用できないかと。それを生徒さんたちが考えて、豊橋にあるヤマサちくわさんと提携して共同開発してくれました。

―地元水産高校や企業、教育委員会、給食センターといわゆる産学官連携によって、今回の「丸っとエビ太郎」の給食提供が実現できたということですね。

壁谷教育長:実際に、三谷水産高校の生徒さんたちが「こんなものを考えました」と蒲郡市学校給食センターにプレゼンに来てくれまして、ヤマサちくわさんも同席の上、これを商品にしていけるかどうかを協議しました。その時に試食させていただいて、そこからまた何度も苦労しながら試作を重ねて、ようやく実現することができました。

―蒲郡市は海産物も農産物も豊富な地域だと思いますが、給食でも地産地消を意識していらっしゃるのでしょうか?

壁谷教育長:地産地消といいますか、地元のものを蒲郡の子どもたちに食べさせるというのはとても大切なことだと思います。給食センターの栄養教諭さんたちを中心に献立をしっかり考えて、とても美味しくいただいております。

試食中の蒲郡市教育委員会 壁谷教育長

蒲郡市では海産物や農産物が豊富な地域性を生かし、
・「たべたくんのメンチカツ(蒲郡産アスパラガス使用)」
・「たべたくんのつくね団子(蒲郡産ミカン果汁使用)」
といった、「たべたくん」を冠した給食メニューを月に数回取り入れて地産地消と地元食材の紹介に取り組んでいる。今回の「丸っとエビ太郎」もこの方針に沿ったメニューとなっている。
今回開発した商品「丸っとエビ太郎」は、粉末状にしたジンケンエビを揚げ半に練りこみ、香りがよく、エビが苦手な方にも食べやすい商品に仕上がっている。また丸ごと粉末にすることにより廃棄ロスがなく、カルシウムの摂取にも貢献している。

蒲郡市では「丸っとエビ太郎」を令和4年2月17日に小学校へ、同年2月21日に中学校給食にて提供した。

学校給食で気を付けていること

「丸っとエビ太郎」を提供後の南川店長にもお話を伺いしました。

―今日提供した「丸っとエビ太郎」はいかがでしたか?

南川店長:僕たちは三谷水産高校の生徒さんやヤマサちくわさん、蒲郡市教育委員会さんが給食に取り入れたものを子供たちの給食のために調理させていただきました。名前の通り、エビ感が非常に高く、出来上がった状態はピンク色が映えていてとてもおいしそうに見えました。
あとから試食したのですがおいしかったですね。思ったよりも歯ごたえもあって、エビの味をかみしめながら食べました。

―提供するにあたって気をつけた点はありますか?

南川店長:どんなメニューでも安全でおいしいものを提供するように心がけています。それはいつも気をつけていることです。
今回だと数を数えるのはもちろんですが、形が欠けていないかとか、焼き上がりの状態にも気を配りました。

―蒲郡市さんは給食メニューにいろいろ工夫をしているとお伺いしました。人気のメニューをひとつ教えていただけますか?

南川店長:うーん、ひとつですか。難しいですね…それなら「揚げ若どりのレモン煮」が特に子供達に人気があります。鶏肉を酒・塩・片栗粉でもみこんで素揚げした後に、お釜で秘伝のタレと絡めて配食する人気のメニューです。

―これからもおいしい給食の提供をお願いします。

南川店長:このセンターは海辺にあるので一日の業務を終えた後に「今日も無事にやりきった」と思いながら見る海と夕日は最高です。いつもそう思えるように頑張ります!

左から 弊社:南川店長、蒲郡市学校給食センター:竹下所長、弊社:浅田マネージャー

最後に竹下所長から弊社へお言葉をいただきました。

 竹下所長:給食に対する安全は特にしっかりされているなという印象を持っています。衛生面での環境もしっかりしていると思っていますし、異物混入については本当に細かいところまでチェックしていただいて、未然に防げているところがすごいなと思っています。ありがたいです。
調理も子供たちに美味しいものを提供したいという心掛けが見えており、それが学校にも伝わっていて給食が美味しいとよく聞いています。学校単位でありがとうとお手紙をいただくこともありますので皆さんにも見ていただいています。
それは調理員さんたちの頑張りのおかげかなといつも感謝しています。